おばあさんをがんで亡くし、ひとりぽっちで寂しかったおじいさんは、ひとり娘に生まれたゆきちゃんの誕生をこころから喜びました。けれど、来年小学生になるのを楽しみにしていたゆきちゃんが、ある日突然、小児白血病に罹ります。おじいさんは、ゆきちゃんががんになるなんて、信じられません。そして、高熱を出してベッドに横になる孫の姿を見るたびに、おじいさんのこころは、どんどん、かたくなになっていきました。ところがある日、隣のベッドのはるちゃんの何気ない会話が、おじいさんのこころを溶かしてくれました。この物語には、小児がんの子どもさんをもつお母さんたちとの交流をもとに、実際にあった病院の中の様々な家族の情景も描かれています。
本書はそれぞれがパートナーをがんで失ってから結ばれたご夫婦が、がん患者さんとそのご家族、又ご遺族との交流を続ける中で必然的に出来上がった絵本です。だから医療者の視点とは違う実体験にもとづいた患者さん側からの絵本になっています。~中略~ だからこそ、この本はユニークなのです。小児がんにかかわらず重い病気が大事な人に起った時に、それぞれが病院や家でどんな思いを持つのでしょうか。それに関して考えてみませんか。多くのヒントが本書にはつまっています。
(細谷 亮太:小児科医・元 聖路加国際病院小児総合医療センター長 現在 特別顧問))